〜白いシャツ〜

ヘチマ襟の真っ白いプルオーバーシャツ。

「あなたって本当に白いシャツを着こなすのが上手いわね。
 それってある種の才能だと思うの。」

(眼鏡越しに写る君は、うっとりした顔でそう呟き、
 得意げに、僕の代わりに僕の自慢をする。)

「オックスフォードでしょ、リネンでしょ、
 ボタンダウンでしょ・・・。
 一体全体、白いシャツだけで何枚持ってるのかしら?」

たくさんある白いシャツの中でも、この一枚は特別だった。

ずっと昔・・・まだ蛙が学生だった頃、
フラリと入った街の洋裁店にそれはポツリとあった。
「いらっしゃいませ。」とは、決して言いそうもない店の男。
彼もまたそのシャツをサラリと着こなしていた。
ゴツゴツした骨っぽい体に無精髭。
ギョロリとした大きな目で、そのシャツを触る蛙を一瞥した。

「気に入った?」
「ああ、はい。なんとなく。」

蛙の言葉を耳にした瞬間、
男は、驚くぐらい顔をグシャグシャにしてニッコリ笑った。

その日から蛙はほとんどの洋服をそこで買うようにしている。
無口でぶっきらぼうな男が生み出す
数々の作品達に惚れ込んでいるからだ。

ヘチマ襟の真っ白いプルオーバーシャツ。
それは、これからずっと着続けていくであろう蛙のユニフォーム。
サラにとっても自慢の一枚。