〜序詩〜


その小屋には、蛙という男が住んでいた。
蛙はとても繊細な男で、
いつも難しい本ばかり読んでいた。
本を読むとき蛙は、
必ずカバーを外し、
読み終わると、もう一度丁寧にそれを戻し、
どんな本も大切に本棚にしまった。
小屋はもう何十年も前に建てられたボロ家だったが、
小屋の中にある大きな本棚は、
それはそれは、とても立派なものだった。

蛙には読書の他にもうひとつの趣味があり、
満月の三日前の夜、
小屋の外に出て、
半かけの月の下で、
ギターを弾くことだった。
けれども、
蛙がギターを弾き始めたのは、まだ最近のことで、
蛙はいつもBm7のコードを間違えた。
今練習しているのは、
「恋人のいない午後にキスの味を想い出す男」の歌。
蛙にはサラという恋人がいる。

今日も蛙はサラが小屋に来るのを待ちながら、
隣の畑で穫れたヒマワリのように黄色いトウモロコシを茹でる。