〜古いオルガン椅子〜

そこには、
隣町の古道具屋『苔』で買ったテーブルと二脚の椅子がある。
テーブルは廃校になった小学校の家庭科室で使っていたもの。
それにブナの木で出来たアンティックチェアと、
古いオルガン椅子。
それでワンセット三万円。
蛙はブナの木の椅子、
サラはオルガン椅子がお気に入り。
「まるで私のようだわね。」
サラはいつも、
座り心地の悪いそのオルガン椅子を愛おしそうに撫でる。

キコキコキコキコキコキコキコキコ・・・
「ほら、見て。」
サラは蛙に、今月になって五つ目の青あざを見せた。
それは、右足の脛にあり、
犯人は、自転車のペダルだった。
「足を引っ掛けて転ぶ瞬間ね、
 頭の中でキコキコキコキコキコキコって、
 この椅子の泣き声がするの。
 きまっていつもそうなの。
 不思議ね。
 そう思わない?」

サラは口の中を黄色いトウモロコシでいっぱいにして、
オルガン椅子を揺らしながら笑った。
サラは、
大抵、
よく喋る。